論文「悲劇・弁証法・トポロジー――ラカンによる「パスカルの賭」(中)」を発表

岩波書店の『思想』3月号に発表した論文の続編となる論文「悲劇・弁証法・トポロジー――ラカンによる「パスカルの賭」(中)」」を同誌の6月号に発表しました。

思想 2022年6月号 – 岩波書店 (iwanami.co.jp)

次回最終回は7月号を予定しています。

HMCオープンセミナー「ジャック・ラカンによる「人間」」(4/15)のお知らせ

下記のオープンセミナーを実施することになりました。4月13日〆切の要登録です。奮ってのご参加をお待ちしております。


 このたび、4月15日(金)に第62回オープンセミナー「ジャック・ラカンによる「人間」」を開催することとなりましたので、お知らせ致します。
 報告者の原和之先生(東京大学)、ディスカッサントの松本卓也先生(京都大学)はいずれも精神分析やフランス現代思想がご専門で、本セミナーではジャック・ラカン(特に初期・中期)における「こころ」の再規定および「人間」の捉え方の変化、といった点に焦点が当てられます。
 ご関心の方は、下記リンクよりぜひご登録ください。皆様のご参加をお待ちしております。

【第62回HMCオープンセミナー】
ジャック・ラカンによる「人間」
・日時:2022年4月15日(金)17:30-19:30
・場所:Zoomオンライン開催
・報告者:原 和之(東京大学大学院総合文化研究科 教授)
・ディスカッサント:松本 卓也(京都大学大学院人間・環境学研究科 准教授)
・主催:東京大学ヒューマニティーズセンター
・申込:4月13日(水)締切で、下記の様式でお申し込みください。
https://hmc.u-tokyo.ac.jp/ja/open-seminar/2022/62-lacan-on-humanbeing/

【概要】
精神分析家ジャック・ラカンは、第二次世界大戦後のフランスにおいて精神分析をその基礎から問い直すなかで、言語学、哲学、文学等さまざまな学問分野を参照しつつ新たな理論を提唱し、20世紀の人文思想に広い範囲で影響を与えました。精神分析が「こころ」を対象とし、これを「ことば」によって治療しようとする営みである限りにおいて、その問い直しのためには「こころ」と「ことば」のそれぞれを、あるいはそれら相互の関係を、従来とは異なった仕方で捉えるということが必要となっていました。

二回を予定している講演のうち初回の今回は、彼による「こころ」の再規定が、どのように「人間」を捉える捉え方に変更を迫ったかという点を考えてみたいと思います。ラカンは必ずしも「人間」を主題的に論じる思想家ではありません。彼の議論の中では「人間」よりもむしろ「主体」が問題にされるわけですが、こうした議論の焦点の移動を引き起こすに至った彼の思想形成の過程を見てゆくと、そこにはある一定の仕方で捉えられていた「人間」を根底から問い直すという契機があり、それが後期に現れる特異な「人間」概念──「人間(l’homme)」ならぬ「ニンゲン(LOM)」──にまで反響しているように思われます。

本セミナーでは、このうちラカンの思想形成の初期から中期、「こころ」の科学の認識論的基礎づけから「他者の欲望の欲望」の問題に、さらには「欲望の弁証法」に至る展開についての報告を糸口としつつ、彼の思想を出発点とした「人間」の多様なあり方の理論的包摂の可能性について考察します。

論文「「想定」としての「構築」」の公刊

以下の論文を発表しました。

原和之,「想定」としての「構築」――「「分析」とは何の謂いか」への補遺,東京大学総合文化研究科地域文化研究専攻紀要『Odysseus』,第26号(2021年),2022年3月,pp. 115-141.

2013年の拙論「「分析」とは何の謂いか――「分析」概念の歴史におけるフロイト」では、西洋思想史における「分析」概念の構成的な契機として、分割、遡行、想定の三つを区別し、これとの関わりでフロイトの「分析」概念に複数の局面を区別するという構想を提示しました。本論文では、そこで議論がやや手薄であった「想定」を核とした「分析」概念について、そのフロイトにおける具体的な実現を、彼の晩年の論文「分析における構築」に表れる「構築」の概念に求める議論を展開しています。

併せて「研究業績一覧」のページを更新しました。論文のPDF等へのリンクがありますので、ご関心の方はどうぞご参照ください。