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「日本ラカン協会連続セミナー:『エクリ』を読む」は、ジャック・ラカンの主著『エクリ』を論文ごとに解説するオンライン・セミナーですが、その「無意識における文字の審級」の回を担当します。日本ラカン協会会員は無料、会員外は有料(一般1000円、学生500円)の有料となりますが、ご興味の方はお運びいただけましたら幸いです。日時は4月21日(日)14時からですが、受講登録いただいた方にはオンデマンドの配信(期間は当日から一週間)もご利用いただけます。ご登録は下記まで。

https://peatix.com/event/3879400

 

9月末に発行された日本ラカン協会の論集『I.R.S.―ジャック・ラカン研究』第22号に、以下の三点を寄稿しました。

・原和之,大会シンポジウム「「クィア精神分析」の可能性:精神分析とジュディス・バトラー」,『I.R.S.―ジャック・ラカン研究』,第22号,2023年9月, pp. 109-110.

・原和之,書評,Jacques Lacan, Le Séminaire, Livre XIV, La logique du fantasme, Paris, Le Champ Freudien Editeur/Editions du Seuil, 2023, 425 p. 『I.R.S.―ジャック・ラカン研究』,第22号,2023年9月, pp. 145-158.

・ファブリス・ブールレーズ,クィアの人々が分析的行為に触れるとき―「タクト(tact)」を再考する, 『I.R.S.―ジャック・ラカン研究』,第22号,2023年9月, pp. 111-126.

一番目と三番目のテクストは、昨年12月のラカン協会におけるシンポジウムの紹介とそこで行われたファブリス・ブールレーズ氏の講演の翻訳です。また二番目のテクストは、今年初めにフランスで出版されたラカンのセミネール第14巻『幻想の論理』の書評ですが、中でラカンによるデカルトの「コギト」の取り扱いを、J・ヒンティッカの「行為遂行(performance)」としての「コギト」という構想とのかかわりで論じています。ご高覧いただけましたら幸いです(『I.R.S.』については会員外への頒布も行われます。詳細は日本ラカン協会サイトをご覧ください)。

哲学会第六十二回研究発表大会の二日目、10月29日(日)午後1時半から開催されるシンポジウム「「世界哲学」という視点」にて、提題者の一人としてお話しすることになりました。提題のタイトルは「生成を語る―精神分析と哲学」となります。配信も準備中と聞いていますので、詳細は下記の哲学会のサイトをご参照ください。

http://www.l.u-tokyo.ac.jp/philosophy/tetsugakukai/

今セメスター授業の履修者用に「精神分析学(2023)」のページを公開しました。右フレームから「講義・演習のページ」→「精神分析学」をクリックしてください。

執筆者として参加した、十川幸司、藤山直樹(編著)『精神分析のゆくえ:臨床知と人文知の閾』(金剛出版、2022年)についての紹介文を表象文化論学会の『Repre』48号に発表しました。下記リンク先よりご覧いただけます。

https://www.repre.org/repre/vol48/books/editing-multiple/2-2/

水声社のメールマガジン「コメット通信」2023年1月号「デリダ・精神分析・記憶」に「「理論」の身分:ジャック・デリダ著『絵葉書II』の刊行に寄せて」と題した小文を寄稿しました。1月末日発行で、さしあたり会員限定ですが、後日ブログで公開されるとのことです。公開ページはこちらをご覧ください。

フランスの精神分析家ファブリス・ブールレーズ氏による下記の講演会を開催しますので、皆様のご参加をお待ちしております。

日時:2023年1月27日(金) 18時30分~20時30分(補足としてフランス語のみのセッションを20時30分から21時まで予定しています。)

場所:オンライン(要登録:下記よりご登録ください
https://u-tokyo-ac-jp.zoom.us/meeting/register/tZcsf-2qrT0oE93KZjfCzUcHfKsb4_w_041i )

タイトル:「Des mariages, des couples et des psychanalystes (さまざまな結婚、カップル、精神分析家)」

講師:Fabrice Bourlez(精神分析家/Ecole Supérieure d’Art et de Design de Reims 教授)

ディスカッサント:牧瀬英幹(中部大学生命健康科学部 准教授)

司会:原和之(東京大学総合文化研究科 教授)

言語:フランス語・日本語(同時通訳あり)

主催:科学研究費補助金 基盤研究(B)「結婚の歴史再考―フランスの事例からみる(ポスト)結婚、生殖、親子、家族」

小寺精神分析研究財団の学際的ワークショップがもとになった、藤山直樹・十川幸司編『精神分析のゆくえ:臨床知と人文知の閾』(金剛出版)11月初めに刊行されます。私も「精神分析の「幼年期の終わり」」という文章を書かせていただきました。目次等はこちらをご覧ください。

10月2日(日)の13時から17時まで、ハイブリッド形式で行われる小寺精神分析研究財団の「学際的ワークショップ『精神分析の知のリンクにむけて』」の第7回「21世紀のエディプス―われわれはまだこの概念を必要とするのか?―」にて発表を行います。演題は「《エディプス》と性別化、あるいは異なった手段による「幼児の性理論」の継続としての性差」を予定しています。ワークショップの詳細についてはこちらをご覧ください。

4月に続いてHMCオープンセミナーの第二回目「ジャック・ラカンによる「言語」」を9月30日にオンラインで開催することになりました。HMCのサイトでも9月19日月曜日には情報が公開されるようですが、申し込み登録はチラシのQRコードまたは下記リンクからすでに可能になっていますので、どうぞご利用ください。皆様のご参加をお待ちしております。

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第83回HMCオープンセミナー「ジャック・ラカンによる「言語」」

【日時】2022年9月30日(金) 17:30-19:30

【場所】 オンライン (参加登録はこちら

【登壇者】

報告者:原和之(東京大学大学院総合文化研究科教授)

ディスカッサント:立木康介(京都大学人文科学研究所教授)

【概要】

 20世紀フランスの精神分析家ジャック・ラカンによる精神分析の再定義の試みは、その定義を基礎づけるより一般的な二つの概念、「こころ」と「ことば」の根元的な問い直しと共に進められてゆきました。このうち「こころ」の問い直しをとり上げた第1回に続き、第2回となる今回は、ラカンが「ことば」をどのように異なった仕方で考えようとしたかを見てゆきます。

 1950年代のフランスで、精神分析の新しい姿を提示すべき立場に置かれたラカンが、精神分析という営みの基礎をなすものとして注目したのが「言語」の次元でした。治療の中で言葉が持つ力については、精神分析の創始者であるフロイトがすでに繰り返し指摘していますが、それが主題化されるのがフロイト以後のこの時期になったのはなぜなのか。その理由の一つと考えられるのが、フロイトとラカンの間に登場した「一般言語学」です。フェルディナン・ド・ソシュールによって創始されたこの分野は、フロイトの議論を制約していたのとは異なった、言語を語るための新たな枠組みを提案するものであり、なかでもその議論の中で提示された「意味」に関する独自の観点は、「こころ」と「ことば」を外的に影響し合う二つの存在としてではなく、互いに結びついて同じ一つの構造をなすものとして見る見方を可能にするものでした。

 以上のような観点から、本セミナーではラカンの思想形成の過程で展開された言語をめぐる議論のうち、中期に集中的に論じられた「シニフィアン連鎖」と「欲望のグラフ」という二つの概念装置をとり上げ、それが言語学や哲学、数学などへの学際的な参照の中でどのように練り上げられていったかを概観した上で、それがそもそも人がなにかを「聴く」とはどういうことかという根本的な問いへの答えとして考案された抽象的な機械、「ラカン・マシン」と呼ぶべきものではないかという見方を提示し、これを糸口としてラカンの「言語」観について考えてゆきたいと思います。